都市は誰のものか。都市と主体性、土地・空間の自治の主体がどこにあるのかという問題は長い年月、歴史の中での様々な問題を孕んできた。部屋という最も小さな私的空間から、公共や自由空間へ出ることが難しくなった2020年、人々は仮想空間に新たな場を築き、そこでの関係性や文化、娯楽を築き上げている。それでもなお、行政や自治、政策といった大きな関係性に私たちは縛り続けられ、インターネットにより思想や情報が自由になったとしても、私たちは場所の制約から逃れられない。
巨大な海からではなく、とある極小の地から。
「幕張市」は存在しない。けれども多くの人によってさもあるかのように信じられている実在しない架空の都市、「幕張市」。この場所から、ステークホルダーとされる様々な人々やレイヤーによって織り成される都市の様相を、それぞれが意思を持って想像し思索するとした時、「多層都市」として立ち上がるのはどんな街やつながりだろうか。故郷、ゆかりある温度のある記憶として、この場所に帰属する人々と共に、都市のあり方やつながり、行政システムや票の配分、文化を都市空間に刻み、自在に創り上げることが可能であると仮定し、そこからうまれる多層な都市を思索する。